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一尺六寸管のメンテナスが終わりました(歌謡曲音源付)
貴志清一
そのメンテナンスの内容というのは、歌口の口径をなんと2mmほど広げるという荒療治でした。基本的に歌口の部分はほんの少しの変形でも大きく鳴りや吹きやすさに影響を与えます。
それは十分分かっているのですが、できれば一尺八寸管に近い開きがほしかったのです。通常の歯並びの人には想像もつかないと思いますが、私の下歯の前歯が一本乱ぐい歯になっていまして、それが下唇を変形につながり、支えが弱くなるにつて息の出口を塞いでしまうのです。
今年で64才、来年は前期高齢者の仲間入りということで以前のように口輪筋の張りで支えることが難しくなった来ました。対策としては口輪筋の支えがなくなり口がヒン曲がってきたな、と思ったらすぐに吹くのをやめて胸ポケットの鉛筆をくわえ
「鉛筆くわえ法」を1,2分するというこで対処してきました。疲れているときなど5分に1回これをしなければならないので、「もう限界!」と悟りました。
一尺八寸管ではそういうことが全くありませんので、音色や吹き心地は変わるかも知れませんが、辛抱しきれなくなり豊中市の
玉水さん宅へ飛び込みました。
まず事情を説明し、歌口の径を広げることは可能かどうかを訊きました。私の吹き方をよく知ってもらっていますので、「はい、わかりました」と言ってさっそく道具一式を持ってきて
携帯していた一尺八寸管を慎重に見ながら削っていただきました。しばらくして「これでどうでしょうか」とおっしゃったので吹いてみますと、もうこれ以上望めないほどに削られています。超一流の製管師だとはわかっているのですが、今更ながら「すごい」と思った次第です。
「ありがとうございます。さっそく持って帰ります。」と私が言いますと、
「いや、削りましたので元通り漆を塗るために4,5日ください。送らせていただきます。」とのこと。
もちろん、自分の工房の製作したものはずっと責任を持って見ていくという方針ですので修理代等は不要でした。
巷ではここの竹は割高感があるということも聞いていますが、製品の品質・素晴らしいアフターケアを考えると、そういうことは全く気になりません。
わたくしもしてもらったのですが、購入後3年でピッチの調整というのも当然、修理料は不要でした。
そして何よりも毎日息を(生き)を通し、その音色で体を包み込む楽器ですので、玉水管の音色の良さは何物にも代えがたいのではないかと個人的には思っています。
メンテナンス修了を記念して、その音色をお聴きいただければ幸いです。(伴奏は残念ながら機械的平均律のクラビノーバ音源ですが)
(音源「星影のワルツ」)