「初春の調べ~地無し管で吹く〈千鳥の曲〉」
令和2年、2020年の初めてのコンサート。
とは言っても素人の楽しみでやっていますので、近くの老人施設での演奏です。
「初春の調べ」ということで古曲から新曲、現代曲まで弾かれる新谷佐登美師を迎えての二重奏でした。
「千鳥の曲」「惜別の舞」「波浮の港」他小品2曲、「雲井獅子」そして最後はお馴染みの「春の海」。およそ1時間のプログラムでした。
千鳥の曲は幕末の吉澤検校のつくった名曲で新春に相応しい箏曲です。この曲はいうまでもなく歌で以て新年を祝い、手事で波や千鳥の鳴き声を表現し後歌で歌い納めます。ですから尺八は唄を台無しにするような吹き方は言語道断です。
しかし音量や性能の向上した地塗り尺八では思いっきり音を小さくしても限界があり、地塗り特有の「ビエ~」という響きで唄を邪魔していまいがちです。
ご存じの通り私は地無し愛好家ですので江戸時代には当然だった地無し管を使いました。地無し特有の柔らかい音色と地歌の声は相性が良いのです。
演奏がすすみ唄が入ったら地無しといえどごくごく小さな音量で吹く必要があります。地塗り管ですとこの「ごくごく小さい音」は欲求不満の塊りですが地無しですとこのストレスがほとんどありません。
地無し管は難しいというのが一般の認識ですが、慣れればそうでもなく「メリ」などは楽々と決まります。
師の松村蓬盟先生のような一流の奏者が吹けばいいのですが、私のような市井の素人愛好家でも地無しを使った地歌箏曲の合奏はなかなか棄てがたいと感じていただければ幸いです。
「千鳥の曲」音源)