『尺八吹奏法Ⅱ』の一文章で長管の音が力強くなった
ペンネーム:長井 竹吹
尺八吹奏研究会さま
はじめてお便りいたします。
わたくし○○流の師範ですが海道道祖とその系譜の横山勝也のファンです。まだまだ「手向」一曲ぐらいしか吹けませんがこの曲で日々長管の音色を楽しんでいます。
手持ちの竹は二尺四寸管で2本目です。1本目は地塗りの二尺四寸で地を厚く塗ってほとんど石笛のような竹でした。鳴りも悪く(自分の未熟もありますが)とにかく素直に乙のレからツ、ロと音が出ませんでした。勢い口を思いっきりヒン曲げての対応でした。これにはホトホト嫌気が差しましてほとんど長管を吹かなくなってしまいました。
数年前、まとまった練習時間が取れるようになりもう一度長管に挑戦することにしました。それには絶対条件として素直に乙ロが出る竹が必要です。そして、できれば節残し地無し管が欲しいと思いました。
そんな贅沢な竹などあるわけ無いと思いましたが貴会の
地無し管の記事を見て大阪は近いのでG工房へ相談にいきました。
そして念願の素直に乙ロが出る地無し二尺四寸が手に入りました。
それから随分たって好きな「手向」もなんとか吹けるようになりました。
しかし、どうも力が音に伝わらないのです。竹も優秀ですので悪いのは自分の技倆です。そっと吹いても音が広がる良い竹ですのでそれで満足すべきなのですが、やはり万分の一でもよいので横山勝也のようにビュー~と吹きたいと思っていました。
昨日なにげなく『尺八吹奏法Ⅱ』を見ていますとp13の、
「下唇裏の口腔前庭は作らないようが良い結果が得られる」という一文が目にとまりました。
・・・もしかしたら、長管は歌口が大きいので下唇裏にも自然と空気がたまっているのでは?・・・
さっそく二尺四寸管を取り出し音出しをしてみました。一尺八寸や六寸ではほとんど下唇裏に空気は存在しない分だけ上唇裏の空気部屋(口腔前庭)に圧力をかけられます。しかし、長管を構えた瞬間下唇裏に空気がたまります。上からも下からも空気を送ることになりますので、双方打ち消し合って結局弱い圧力しか作れないのではないかと考えました。
そこで少し工夫して上唇裏の口腔前庭だけを使うようにしてみました。そうした瞬間、今まで考えられなかったような力を音に与えることができました。
本当に不思議なことですが、これからますます長管を楽しめると喜んでいます。あまりに感激しましたので、この気持ちを伝えたく未熟な演奏ですが「手向」を録音しました。どうか一度お聴き下さい。
たった一文章ですが『尺八吹奏法Ⅱ』がなければこの先何年も長管の吹き方が分からなかったでしょうから、この本に感謝です。
『尺八吹奏法Ⅱ』を書かれた貴殿に心から御礼申し上げます。
ありがとうございました。
貴会のますますの発展をお祈り申し上げます。