演奏会で「ピッチは442です」と糸方の先生に言われました。
442というピッチとは何なのでしょう?
貴志清一
今回は、箏・尺八の演奏会に出演する機会の多い方のための記事です。
糸方の先生から「今日、ピッチは442です」と言われて、「はい、分かりました。」とニコニコして返事する尺八奏者はいませんか?
本当はニコニコなんかしてはいけないのです。
本来、糸方の先生が尺八奏者に「今日のピッチは、いくつにしましょうか?」と聞くべきなのです。聞きに来てくれない場合は尺八奏者から「今日のピッチは441にしてください。」という風に言わなければいけません。
冬場の寒い時期など尺八は平気で438ヘルツ以下になります。そんなときに半音(一律)の6分の1程も高い442の音程で琴を演奏されたらたいへんです。尺八奏者はすべての音を思いっきりカって吹かざるを得ません。この場合良い演奏など望むべくもありません。
この最悪の事態を避けるために普段、どのくらいの室温の時、だいたいの音程は何ヘルツになるかを知っておかなければなりません。
そして、その最適のピッチ(音程)を糸方に自信を持って言えるためには、そもそも440や438のピッチというのはどんなものかを知る必要があります。
詳しくは各種の音楽理論書を読めばよいのですが、ここではそのピッチの要点を覚えてください。そして自信を持って合奏を楽しんで下さい。
[ピッチの要点]
○ピッチ(音程)とは音の高さのことです。
○440のピッチとはドレミで言えば「ラ」の音、尺八では乙チの音が一秒間に440回振動している音の高さです(Hzヘルツ)。もし441回振動すれば同じ乙チ(「ラ」A4)でもA=441となります。
○1ヘルツHzの差は一半音(1律)の4%の差になります。
ですからA=442とA=438を比べますと、442-438=4Hz
4%×4Hz=16パーセントとなります。
4ヘルツの差で半音の16%、すなわち半音の6分の1の差になります。
ですから、ピッチ合わせは合奏の時、如何に重要かがわかります。
因みに1半音を100として%で表したものをセント(C)と言います。
ところで、尺八は吹き方によって平気で上下半音くらいピッチが変わる楽器で合奏するのは、私のような愛好家にはとても難しいという例として、西洋楽器のようなきちんとした音程では吹けなかった「コンドルは飛んで行く」を参考に聞いて下さい。
(音声ファイル:「コンドルは飛んで行く」 ↓)
○チューニングメーターの表示部に使われているセント表示(Cent)について解説します。
これによって冬場A=438平均の高さで吹く尺八が、A=442の箏と合奏した場合、半音の6分の1もピッチが低くなってしまう理由が分かると思います。