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「短簫と尺八②-ここまで似ている一節切と短簫(タンソ)-」
貴志清一

 室町時代から戦国時代、安土桃山、江戸前期の300年余り、大いに流行した一節切(ひとよぎり)については
尺八吹奏研究会・頒布資料を通していろいろと解説して参りました。

 その日本の一節切なのですが朝鮮の伝統楽器である短簫(タンソ)と共通点が多いことに気がつきました。
 435号でも検証したとおり短簫の音色や奏法は尺八によく似ています。
一節切も江戸時代に入るまでは普通に「尺八」と呼ばれていましたのでやはり短簫と音色が似ています。

 参考までに短簫(タンソ)と江戸時代の古管一節切(銘「瀧颪」)の写真を見て下さい。

(短簫と一節切の写真)


 形は少々違っていますが、短簫も一節切も出る音が同じなのです。即ち使われている音階が一致するのです。
 まず一節切の音階表を見ながら音を聴いてください。

(一節切の音階音源)
https://comuso.sakuraweb.com/music/436-2.MP3

(一節切の音階図)


今度は短簫(タンソ)の音階図を音を聴きながらごらんください。
(短簫の音階音源)
https://comuso.sakuraweb.com/music/436-4.MP3
(短簫の音階図)


 一節切も短簫もA(ラ)を主音とした雅楽で言う律音階を使っています。
 ここまで一致するのは日本も朝鮮も律音階を使うからなのですが、
それにしても一節切も短簫も最低音がAと言うのは不思議な気がします。
短簫(タンソ)の音階に良く合うのは民謡の「アリラン」です。これを短簫で吹奏してみます。

(短簫の「アリラン」音源)
https://comuso.sakuraweb.com/music/436-6.MP3

今度は一節切で同じ曲を吹きますが、同じ律音階ですので楽々と吹奏できます。

(一節切の「アリラン」音源)
https://comuso.sakuraweb.com/music/436-7.MP3


そうしますと気になるのは一節切と短簫の歴史的由来です。
 一節切の歴史については日本音楽史の若干の研究成果が使えそうなのですが
朝鮮音楽史におけるタンソの歴史と比較した研究はあるのでしょうか。
 「短簫と尺八③-楽学軌範と短簫、そして一節切尺八」につづく。
(予定)