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 DVD映像による『尺八奏者のユリ(ビブラート)』頒布
                                     貴志清一
 ビブラートには音楽に生命を吹き込む働きがあります。しかし聴いていて心地よい滑らかなユリ(ビブラート)で演奏するのは難しいものです。
 幸い、尺八のユリ(ビブラート)は横ユリと息の拍動という目で見て確認できる要素でできていますので、修得はむつかしくないはずだと思います。
 今回、解説書と実演DVDを用意しましたのでこの資料でなめらかなユリ(ビブラート)を獲得されますことを願っております。
 お申し込み要領は「頒布CD・資料」をご覧下さい。
 
 ところで、ビブラートほど個人の好みに影響されるものはありません。
 歌の場合を考えて見るとそのことがよく分かります。
 森進一に代表される、演歌歌手のつける唸るようなビブラートに酔いしれる聴衆もいれば、一方では「演歌のビブラートほど下品なものはない」と嫌悪する人もいます。
 尺八も音程の上下幅の広いビブラートで吹く人もいますが、もっと上品?にすらっと音程幅を狭く取ってビブラートをかける奏者もいます。
 これは個人の好みですので、どちらが正しく、どちらが間違っているというものではありません。
 この「尺八奏者のユリ(ビブラート)」では割合淡泊なビブラートを良しとしていますが、何が何でもこのタイプのビブラートを押しつけるつもりはありません。
 ただ、一般論として、首の横ユリに息の拍動を加えたビブラートが基本になるということです。
 この〈横ユリ+息の拍動〉ができれば〈縦ユリ+息の拍動〉ビブラートはきわめて簡単に修得できます。その意味で、このDVD教本を出発点にしていただきたいと思います。
 本来ですと尺八のビブラートの解説書は、私のような素人よりも、実力と名声を兼ね備えたプロヘッショナルの尺八演奏家に作って頂きたいのですが、今のところ少なくとも私が尺八を習い始めた40年前から現在までこういう本は一つもありません。
 しかし私のような一(いち)愛好家のところまで「ビブラートの解説をして欲しい」というお便りが多く寄せられる現実を見て、あえて公開に踏み切ったわけです。
 この『DVD映像による尺八奏者のユリ(ビブラート)』がきっかけになって、もっともっと素晴らしい尺八ビブラートの解説書や映像が出版されることを願っています。