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「松巌軒鈴慕(しようがんけんれいぼ)」修行中
貴志清一
都山流や琴古流の尺八吹きでも名曲「松巌軒鈴慕」という古典本曲をご存じの方は多いとおもいます。
私も琴古流ですが、いつかはこの曲を吹いてみたいと思っていました。
我流では歯が立たない難曲ですので国際尺八研修学館の石川先生にほんの少しご指導をいただいたことがあります。その時は「チルツメリル~」の音型があまりに難しいのでここ3年ほどそのままにしていました。
しかし折に触れて「チルツメリル~」の音型練習は飽きもせず続けてきました。
ふとしたきっかけで故
二代目酒井竹保師が「松巌軒鈴慕」について解説しているのを耳にしました。伝説だとは思うのですが江戸時代、この寂寥感に溢れた曲を吉原の遊女たちが聴いて心中事件が続発し、「以後虚無僧は吉原でこの曲を吹くのは禁止」になったということです。
そういわれれば、本当に哀しい曲だとおもいました。
尺八吹きとして、こんな名曲を吹かない手はないと思い最近折に触れて練習しています。
5月5日(2017年)に演奏を依頼されていたのですが、思い切ってこの曲の前半だけでもとプログラムに入れてみました。
その時のパンフレットに書いた曲目解説は次のようなものです。
[1.「松巌軒鈴慕」(尺八古典本曲)前半
江戸時代に虚無僧が吹いた曲を「本曲(ほんきょく)」といいますが、この曲は岩手県花巻にあった虚無僧寺「松巌軒」に伝わったものです。 その寂寥感に溢れた旋律により多くの尺八家によって吹奏されてきました。
天保(1830~44)のころ江戸の吉原で虚無僧達がこの曲を吹き、その哀愁に満ちた尺八の調べで遊女とその馴染みが心中する事件が多発しました。そのため「以後、吉原で松巌軒鈴慕を吹くことは厳禁」と虚無僧の属する普化宗から命令が出るほどでした。
(1991年、竹保流二代目・酒井竹保の談)]
当日は少々正統とはいえない、拙い"琴古流奏者の"松巌軒鈴慕でしたが、深い哀しみを湛えた旋律にご来聴の方々もしんみりときいていらっしゃいました。演奏会終了後、ご年配の男性の方がわざわざお声をかけてくださり「聴いていて涙がでそうになりました」との感想をいただきました。
これは100%、この曲が持っている音楽の力によるものだと思います。
修行中の録音でまだまだ改善点が山ほどあるのですが、松巌軒鈴慕の前半をお聴き頂ければ幸いです。
(音源「(部分)松巌軒鈴慕」)
https://comuso.sakuraweb.com/music/364-shouganken.MP3
「この記事を書いた後、二代目酒井竹保について何となく調べていますと驚いたことに有名な古管"古鏡(江戸時代)"二尺一寸を使って松巌軒鈴慕を吹いている音源を見つけました。
HP上では二代目酒井竹保の名前はでていませんが、誰が聴いても二代目酒井竹保でしょう。
私の上記の音源が幼稚園児がフエを吹いているように聞こえ、恥ずかしい思いですがあえて削除しませんでした。
聞き比べれば、大人と子供の勝負で、比べものになりませんが才能の違いですから人力では如何ともしがたいです。
それでは、検索語「尺八しか見えない」をYahooHPに入力するか、もしくは
へアクセスしてください。
(ほんとうに、驚きました。それにしましても、この投稿者の方は、どうして演奏者名を記述しなかったのでしょうか)