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地唄「磯千鳥」について(覚え書き) 貴志清一
尺八を習っている愛好家の方は、たいてい入門すると地唄を練習します。糸方の先生と合奏しているうちに三曲合奏がとにかく好きになってしまう人もいるかと思います。
そこで、尺八古典本曲と違う、律のきちんと決まった三絃・琴にあわすことの困難に出会うのが普通です。
また、歌詞の意味も知っていなくてはなりません。
私自身、地唄の三曲合奏は決して上手くはないのですが、地唄の尺八譜を一通り習った経験から、すこし述べてみたいと思います。
磯千鳥 作詞・橘岐山/作曲・菊岡検校/筝手付・八重崎検校
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うたた寝の、枕にひびく暁の鐘、 実にままならぬ世の中を、何にたとへん飛鳥川、
昨日の、渕は今日の瀬、かはりやすきを変わるなと、
契りし事もいつしかに、身は浮き舟の楫を絶え、
今は寄る辺もしら波や。 棹の雫か涙の雨か、濡れにぞぬれしぬれ衣、
身に泌む今朝の浦風に、侘びつつ鳴くや磯千鳥。
1.歌詞についてはいろいろな解説書がでていますので、説明を省きますが、一つだけ述べると、やはり江戸時代以前はごく普通だった「掛詞」や「縁語」を理解している必要があるということです。
「飛鳥川」とくると、これは「明日」を連想し、明日の反対の「昨日」が呼び出され、今日の「瀬」に続きます。そして「瀬」は「淵」との対象語です。 また、飛鳥川はよく川の流れが変わったことを常識として、「かわりやすき」を導き出します。もちろん変わりやすいのは男女の心で、この男女は後の世まで「契った」のに、そのことも「いつしか」と続きます。
それらの連想によって、歌っている演奏者も聴き手もイメージを膨らませたのでしょう。
2.奏法 私は琴古流ですので、音の出始めに「当たり」を入れますし、ゆったりしたテンポの時にメリ音に折りをいれたします。
このところは、各流派で違いますので各自の師匠に教えてもらってください。
ここで、述べたいのは、やはり「今吹いている旋律は何調か」ということを知っていた方がより良いということです。
「磯千鳥」ははじめから ロメリ が多くでてきます。初心者、中習者でもなかなか的確なロメリが出せなくて、何か律の定まらない曲にしてしまいます。
それは「今吹いている旋律は何調か」がわかっていないからだと思います。
みなさん十分理解していると思いますが、
まず レ調は次の通りです。 上行 レ ウ リ ロ ツ レ (ウ:都山ではチメリ
)
下行 甲 レ ツメリ ロ リ ウ レ
この音のつながりをしっかり把握していると
「磯千鳥」の最初は り調ですから
上行 リ ロメリ ツ レ ヒメリ ヒ (ヒメリ:都山小さいハ
ヒ:都山 ハ )
下行 ヒ チメリ レ ツ ロメリ り
このようになります。従って、ロメリとリは半音ですから、自然とロメリはうわずらないようにするはずです。
また、このロメリは出にくいですので、第4孔をほんの少し開けると出やすいものです。
このように、全曲、今何調か理解しているとやがて糸方とぴったりあった合奏ができるようになると思います。
私も、今後努力していきたいと思っています。ともにがんばりましょう