会報 No.43
| 村岡実氏の講習会についての田村氏のご意見に対して 貴志 清一 |
田村様へ
村岡実講習会のご感想、有り難うございました。
村岡先生からは文面で2,3回お手紙をいただいたことがあります。
私の「尺八吹奏の基礎」に対する御批評をいただいたのはもう3,4年前になります。
私も田村様のお手紙をいただき丁度大阪で講習会がありましたので参加させていただきました。
さて、文面を拝見させていただきまして、思ったことを述べさせていただき、何かのご参考にして下さい。
尺八は《吹くにあらず吐くものなり》というのは全くその通りです。
吹きますと腹の底からの息が唇の長い粘膜を通らないので息が整流されず艶のない音になってしまいます。
又、顎の下にタコができるのは自由な口のコントロールを阻害しますので良くないことです。
但し、音楽的にはいつもいつも「まろやかに」出している音が自分の気持ちの表現ではないこともあります。
すなわち、音の「まろやかさ」を犠牲にしても余りある”音楽的な効果”のことも考えねばならないと思います。
この問題は個人の好みの問題ですので、すべての人に正しいというものは存在しないと思います。
基礎練習時に、「まろやかさ」を心がけるのは大切なことです。
曲の演奏では曲想がやはり優先します。
その意味では、文面だけを拝見しますと横山氏・山本氏もまだまだだというニュアンスにとれますが、やはり尺八演奏で果たした両氏の功績は多大なものがあると思います。
文中の「・・・・この時、口腔前庭は自然に小さな空間を作る。それでよい。師はこれを自然音と呼んでいる。」
この「口腔前庭」の概念は実際に名人達は体得していたのですが、言葉としては10年前までは尺八界ではまだ使われていませんでした。
その意味で、私の「尺八吹奏の基礎」が広く普及していることを実感しました。
私の参加した'98.4.29の日は、私が参加していたせいでしょうか、口腔前庭のことは全く触れられていませんでした。
さて、これは大切なことで村岡氏も繰り返し強調していたことですが、「唇に力を入れない」ことは大事です。
ただ、これを村岡氏の講習会に行かないで文面だけで理解しますと
「顔面のすべての筋肉に力を入れない」と誤解しやすいのです。
氏の言われるのは、「唇に」力を入れないと言うことだと思います。
氏は唇に力を入れないことの理論のために、かえって口輪筋まで脱力しすぎるように思いました。その結果、音に張りが無いようにも感じました。(もしくは、音の張りはご高齢のためでしょうか)
尺八吹奏にとって大切な{唇の赤いところに力を入れない}ということは、私の論説「唇の周りに適度な緊張を持たすために」という会報1号を参考にして下さい。
一言で言いますと、口笛を吹く時の唇の周りの筋肉の使い方が理想なのです。
さて、もう1点、
5,首を振る細かいユリはない方がよい。
これは、曲によります。
尺八は息でユリをかけてしまいますとフルート的になり尺八の良さが消えてしまいます。
息の支えをもった首振りのユリはあらゆる速さに対応できる理想的なヴィヴラートなのです。
この点、村岡氏の言は時と場合によるとお考え下さい。
さて、私なりにお便りについて思うところを述べましたが、村岡氏のような長いキャリアをお持ちの先生に直接目にかかり、指導を仰ぐというのは大変大事なことです。
細かい点ではいろいろあるかも知れませんが、田村様にとって大変有意義な講習会であったと存じます。 貴志清一
尺八音楽のより一層の普及・発展のために本研究会を発足させていただきまし
た。
尺八奏法に関して、全国の尺八愛好家の皆様の意見交流の場ともしてゆきたい
と思います。
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