会報 No.28
| 五線譜曲の尺八向き移調の実際 秋山 康郎(香川県)(1997年11月15日) |
たまには邦楽以外の歌謡曲とか内外の歌曲なども吹いて息抜きをしてみよう
。しかし尺八用の譜がなくて手がけ難い。そんな場合、どうされていますか。私
は、五線譜さえあれば、次のような手順で尺八用に移調しております。 なお、
本稿は会報26号所載記事の続編のようなもので、五線譜にも少し馴染まれてい
ると分かりやすいと思います。
さて、尺八で吹きやすいのは、前稿で説明の通り、♭(フラット)が1〜3つ
のヘ長調(ニ短調)、変ロ長調(ト短調)、変ホ長調(ハ短調)で、私は大抵の
場合これらのC系調に移してしまいます。 例をあげて説明します。
1、へ長調「早春譜」の場合 この曲は、♭1つのヘ長調(F)ですが、♭
系だからといってすぐ「しめた。」と思うのは早計です。音域はドから高い方の
ファまで使われていて、低いドは乙ロより1音低いロの大メリですから、容易に
は吹けません。勿論全体にオクターブ上げればよいでしょうが、大甲ツが必要で
、七孔でも出しづらく、五孔では出せません。
そこで移調が必要になります。 最低音はドで尺八には低すぎるのですから、
まず1音上げて考えてみますと、これがレ(尺八のロ)になってよさそうに思い
ますが、ヘ長調の1音上げはト長調、調記号は♯1つの形、この♯系は尺八には
不向きなのでこれは敬遠して、次に更に1音上げてみますとイ長調、これは♯が
3つにもなって駄目、続いて今度は半音上げますと変ロ長調(♭2つのB♭)で
これは尺八向きです。 この変ロ長調はヘ長調より2音半上がったわけで、この
曲の最低音ドは乙ツ、最高音ファは甲ハの半音で尺八音域にきれいに収まります
。 こうした検討にあたって便利な道具がやはり会報26号にある音符変換リン
グで、
2、ホ短調(Em)「おまえに」の楽譜の場合 この曲は♯ひとつのホ短調
(Em)です。このままでも1オクターブ上げれば尺八音域内ですから吹けない
こともありませんが、ツ・ハのメリやレの半音がしっかりでてきて、結構やっか
いなので移調してみます。 今度は最初からオクターブ上げて考えてみましょう
。そしてまず1音下げてみますとニ短調(♭1つDm)となってこれは尺八によ
さそうです。変換スケールは次のようになり、音域を調べますと(上段)乙ツか
ら甲チに収まって申し分ありません。 これももう一歩進めて、1音半上げま
すとト短調(Gm)です。これも尺八向きで音域は(下段)最高がピですから十
分です。 演奏にあたっては、ニ短調では五孔も七孔も大差ありませんが、ト短
調では七孔ですと全音正確な音できわめて快適な演奏ができます。 結婚披露
宴などで1stコーラスはDmで2ndコーラスはGmに転調して吹けば拍手の
中身も若干変わることでしょう。しかし3rdコーラスまでやるのは控えましょ
う。スピーチと同類です。くどくなりますが、もう1曲、よくご存知の曲です。
原調の変ロ長調(B♭)で十分なのですが、主音がハの半音で五孔ですと少し吹
きづらいという場合には、このようにヘ長調(F)に移調すればこの曲は、いわ
ゆるヨナ抜きなので五孔で非常に楽に吹けることになります。詳細は略します。
最後に蛇足ですが、この移調に際しては、尺八の寸法を気にする必要はありま
せん。全て八寸で考えるだけでよく、演奏時に使う尺八によって自動的に調が決
まります。
例示曲で言いますと、
・八寸 変ロ長調 →六寸 ハ長調 → ニ尺 イ長調
・八寸 ト長調 →六寸 イ短調 → ニ尺 ヘ短調といった具合です。
伴奏をつける場合は、このことを知って伴奏のキーを決めなければなりません
。 なお、カラオケなどで伴奏をつけるにあたってそのキーを自在にシフトして
、使用する尺八にぴったりマッチさせる方法もありますが、これは単なる息抜き
気分と言う訳にはまいりませんので、改めて機会があればご紹介させていただき
ます。
五孔尺八を七孔尺八にする方法は? 松山市 清水 氏より
・五孔尺八を七孔尺八にする方法を教えて下さい。
● 五孔尺八を七孔尺八にするに際して 貴志 清一
ご本人には先にお返事をしているのですが、会員の皆様方で同じ悩みをお持ち
の方もいらっしゃすのではないかと思い、掲載いたしました。 さてこれは 単
純明解な答ですが、「製管師さんにしてもらって下さい。」とお答えするのが最
良ではないかと思います。 とにかく素人は絶対に尺八に孔を開けない方がよい
と思います。 ハ(琴古リ)メリの孔は丁度尺八の継ぎ手のところで細心の注意
をしなければなりませんし、ツメリは音響的に斜めの孔で、正しい音律の大きさ
を開けるのが大変です。 私はいつも小林氏に頼むのですが、特にツメリの小指
の位置は個人差がありますので、実際に製管師さんにお会いして、自分の一番よ
いところに孔を開けてもらう必要があります。ツメリの小指の位置は1mmもず
れると吹きづらくなります。従って、地方で郵送するときはしっかり「この位置
で」と×印をつけて送らなければなりません。(勿論孔開けにも技術料がいりま
すので、1万円程度の木管ですと、はじめから七孔になっている木管を購入した
方がよいかと思います。歌謡曲を楽しみで吹く程度ですと、木管七孔でも十分だ
と私は考えています。) これは私個人の全くの思いこみかも知れませんが、五
孔を七孔にすると何か、音色や吹きやすさが変わるような気がします。人に聞い
てみますと「変わらない」と言われるのですが。 ですから、もしかして鳴りが
変わるかも知れないということもある程度考慮にいれるとよいと思います。 し
かも八寸管ですと、歌謡曲以外にはほとんど七孔はいりません。杵屋氏の「明鏡
」の速いところですら、何とか五孔で吹けます。ですから八寸管についてはいつ
も使っているのとは別の竹を七孔にすべきだと私は考えています。 以上、ご不
明の点がありましたらご連絡下さい。
尺八音楽のより一層の普及・発展のために本研究会を発足させていただきまし
た。
尺八奏法に関して、全国の尺八愛好家の皆様の意見交流の場ともしてゆきたい
と思います。
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事務局・責任者 〒590-05 大阪府泉南市岡田2−190 貴志 清一