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ラヂオ岸和田局の番組収録「尺八あれこれ」、済みました。  貴志清一

 この前、大阪の南部のラヂオ岸和田さんから放送収録のお話をいただきました。
 尺八についてのお話を、ということで30分の収録をしてきました。
 番組中に「リンゴ追分」など2曲、入っています。
 FM放送で、だんじりで有名な岸和田市近辺しか受信できないはずですが、
 今はインターネットが普及しまして、ラジオ局のHPから直接聞くことができます。

https://797fm.com:9443/radiolog/hcss.php

 放送時間は2025年12月22日(月)午後4時~4時半
 再放送は 12月24日(水)午前8時~8時半です。

 もし聴取いただければ、私のHP記事に載せていない尺八に纏わる話などがお聴き頂けます。
 収録は12月4日でした。

 とにかく質問されるままに喋ればいいと思っていたのですが、
 そうではなく事前に質問事項とそれに対する応答を文面にしておくことになっていました。
 放送当日、お聴きいただけない方のために、以下その内容を書かせて頂きます。

 (放送原稿案)
1.自己紹介
 尺八演奏家の貴志清一(きし きよかず)と申します。
 尺八歴はほぼ50年です。(半世紀近くほぼ毎日尺八を吹いてまいりました)

2.プロフィール
 20才台中頃より趣味として尺八を始めました。
 琴古流(きんこりゅう)の名人・故松村蓬盟(まつむら ほうめい)師に永らく師事。
 30才台よりいろんなコンサートで尺八を研鑽。
 貴志清一尺八教室で後進の指導に当たっています。
 また、琴を含む邦楽合奏の指導も行っています。

3.尺八を始めた動機、きっかけ。
 学生時代はブラスバンドやオーケストラでフルートを吹いていました。
 ところが、ピアノやバイオリンなどの早期音楽教育には無縁の家でしたので
 西洋音楽、特にバッハやモーツアルトの音楽にはとうとう馴染めませんでした。
 単に機械的に五線譜の音符をフルートの音に変換しているだけの自分に気がつき、
 もっと自分が心の底から演奏したい楽器は無いのかなあと悩んでいました。
 そんな折、ラジオで昔の虚無僧が吹いた尺八の曲を聴き、自分も吹きたいなあと思ったのがきっかけです。

4.尺八の魅力
 尺八の魅力はなんといってもその音色です。竹という自然の素材から竹林を吹き渡る風のような響き。
 一つの音を出しているだけでも何か大きな自然に包まれるような錯覚を起こさせる音色です。
 また尺八の音楽は人間が歌っているような、話しているような、より自然に近いもので、それが魅力です。

5.尺八を吹くことで自分が変わったこと
 尺八を吹くことで、その響きが自分自身に伝わり精神の安定に繋がります。
 また、尺八と琴の合奏などで人と人のつながりができて自分の世界が広がりました。

6.尺八ボランティア活動
 コロナ騒動で回数は極端に減りましたが、以前は月に1,2回デイサービスの広間や病院に永らく行っていました。
 また年に1回以上は小学校の邦楽鑑賞会で演奏しています。

7.ボランティア活動での喜び、やりがい
 演奏する私と聴いて頂く方が、全く言葉なしでも尺八音の不思議な力で心が繋がる感覚を実感します。それはやはり、嬉しいことです。

 泉佐野のひだまりという施設にギター奏者と演奏に行ったときのことです。
 寝たっきりでほとんど表情もなく、単にそこにいるだけの95才は越えていると思われるおばあさんが車いすに埋もれていました。

 担当のスタッフの人も「何も感じないないのだろう」と思い、私も「おそらく、その方は何も聴いていないのだろう」と思っていました。
 その時は終戦直後の懐メロを吹いたのですが、演奏が進むにつれて今までおそらく何年も喋ったり表情を変えたりしなかった
 そのおばあさんが一筋の涙を流しているのでした。

 そのことに気がついたスタッフの方が「考えられない」といった表情で驚き、曲が終わるとその場に居た他のスタッフ全員に
 「おばあさん、泣いてる!」と知らせました。

 日頃は「尺八音楽は心の薬です」と偉そうに言っているくせに「このおばあさん、何にもわかれへんやろな」と思っていた私もびっくりしました。
 心の悲しみが溢れ涙になって流れるとき心は浄化(カタルシス)されます。
 その浄化によって「また新しい気持ちで生きていこうという勇気が湧きます。
 ほんの一時ですがそのおばあさんに、そんな勇気を持っていただいたことが嬉しかったです。
 尺八演奏のボランティア活動でいろんな経験をさせていただく時がやりがいを感じる時だと思います。

8.今年一番思い出に残っていること
 やはり、11月19日に貝塚市山手地区公民館祭りでの演奏です。
 指導に行っています山手公民館の邦楽クラブ「桜」の舞台発表の時に、尺八だけの曲を演奏させて頂きました。
 「鹿の遠音」という曲です。中学校の音楽鑑賞曲にもなっていまして、尺八二人で掛け合う難しい曲です。
 経歴10年でまだ私の教室へ来て3年しか経っていないNさんとの二重奏でした。
 大学の邦楽部で4年尺八を吹いただけの人ですが、私と遜色のない良い演奏ができました。
 至らないかも知れませんが私の指導の成果が証明されたみたいで嬉しかったです。
 その教室生はまだ20才台の女性で、江戸時代は女性は吹くこと罷り成らん、戦前までは「女が吹くものでなかった」尺八ですので
 観客の皆さんも彼女におおいに注目、大きな拍手をいただきました。
 自分の弟子が大いに褒められたこのことが、今年一番の嬉しかった出来事です。

9.2026年の目標、夢
 健康でいつまでも尺八が吹くことが目標です。来年の1月にはさっそく貝塚市の葛城小学校へ尺八ボランティアに行きます。
 また、前半までに4つの演奏の機会がありますので、健康で居るというのが最優先の目標です。
 周りが終活を始める年齢になりましたので「夢」を描く歳でもないのですが、あるとすれば、そして叶わぬ夢ですが、
 「尺八を一吹きを聴いただけで、自分もそして聴いている人も思わず引き込まれるような演奏家になりたい」と思っています。