2年ぶりの小学校、琴・尺八鑑賞会 貴志清一
2024年9月3日。
今年も演奏依頼のありました貝塚市立葛城小学校5,6年生対象の琴・尺八邦楽鑑賞会へ行ってきました。
前回は尺八を含む世界の民族楽器フエ類の演奏をギター伴奏でおこないましたので、今回は琴・尺八だけでプログラムを組みました。
私の尺八は手弁当のボランティアなのですが、伴奏の先生はそうもいきません。
「春の海」は教科書に載っていますので必須、高いレベルの琴奏者でないとつとまりません。
今回、幸い知り合いのお琴の先生のご好意で手弁当にてお手伝いしていただけました。
本当は尺八を広く知ってもらう活動として学校公演も年3,4回はしたいのですが、下合わせから当日の楽器運搬、
そして演奏となりますのでとてもとても毎回依頼するわけにはいきません。
あと1,2人私の周りにそういう方がいらっしゃったら助かるのにと思っています。
さて午後1時に学校到着。準備を始めましたが今年は生きていくだけでやっとという猛暑。
尺八はピッチ(音程)の問題があります。
日本音階の曲だけではないので西洋音楽の純正律に合わす琴は主音を444Hzに取りその上下の音を純正5度にとります。
同じく主音の三度上の音は分かりやすく441(444-3)Hzに設定しその上と下2つの5度音を純正に取りました。
「春の海」は日本音階の曲ですので勿論平調子を元にします。
いよいよ開始時刻の1:55。
紹介のあと1曲目は「日本のわらべ唄」。
子供達にとって親しみのある曲と思ったのですが反応は今ひとつ。
考えてみれば路地で「通おりゃんせ」をみんなで歌いながら遊んでいる子供達は、少なくとも私の住んでいる地域には居ないのです。
どんな狭い道でも舗装されていて車が我が物顔で通ります。
うっかり遊んでいますと交通事故になるか、「どこで遊んでんねん!」と口汚く罵られるのが落ちです。
車社会が子供達を追い払っているのです。せめて奥まった道などは時間規制で歩行者専用にならないものでしょうか。
演奏している私の目の前の子供達にとって「わらべ唄」は遠い国の大昔の曲なのでしょう。
子供達にとって一番安全な遊びが「ゲーム機の画面に向かって忙しく指を動かすこと」という社会の日本。
もう一度みんなで考え直す時がきているのかも知れません。
対人関係を学ぶ大切な子供時代に子供達を「引きこもらせて」、思春期・青年期に「こら!おまえら、引きこもりはあかんやろ!」
と言っているようなもので、如何なものかと思います。
かく言う私も車の送迎でここに来ているのですから、偉そうなことは決して言えません。
しかし、路地の時間規制など、なんとか出来ることもあるのではないでしょうか。
兎に角、「日本のわらべ唄」は選曲ミスでした。
次に琴の楽器紹介を兼ねて宮城道雄「さくら変奏曲」抜粋を弾いていただきました。
琴の音色の魅力でやっと子供達の集中力が戻りました。
次は尺八の紹介。(一)尺八(寸)の名前の由来を説明したあと波の音そっくりな音が出るウェイブ・ドラムで
厳しい冬の北海道の荒波を想像してもらいながら「江差追分」を地無し管で吹きました。
楽器の持つ音色の力でしょうか、びっくりするほど子供達は「尺八の響きの世界」に浸っていました。
かく言う私自身も吹きながらそんな気分になりました。「心が旅する」とでも言うのでしょうか、尺八は巧拙に拘わらず心の健康に良いような気がします。
◆ (音源)「江差追分」
その次に「与作」を二尺四寸の長管で琴と合奏。これは担任の先生や時間の余裕のある先生方に受けていました。
そして教科書に詳しい説明も載っている「春の海」。事前に音楽の先生が指導していただいたようで、子供達は集中して鑑賞していました。
子供の飽きを心配して省略・後半カットの演奏でしたが、これなら全曲演奏してもよかったかなと思いました。
もちろんお琴の先生の技倆の高さにも大いに助けられたことも忘れてはいけません。
◆ 音源{春の海」
最後に教科書に載っている「いつでもあの海は」という曲を尺八・琴の伴奏で全員合唱して今回の邦楽鑑賞会を無事終えました。