四国尺八遍路パート2 愛媛編⑩ 土井通有
○第7日 2023年5月29日(月) くもり
素泊まりだったので早朝の出発を予定しました。朝食はコンビニで買っておいたクロワッサンを食べ、簡単に済ませました。
この日から天候が崩れるとのこと、早めの行動がよいようです。6時前に出発、国道に出て地図で道を確かめていると信号が変わり、
急いで横断歩道を渡ろうとしました。途中まで渡ったときに金剛杖を持っていないことに気づきました。
信号機の所に忘れていたので、引き返して取りに戻りました。やっと渡りきったところで、それを見ていた道の駅の休憩所でテント泊をしていた男性が、
「何で戻ったか分かったで、チリンと鈴が鳴ったやろ」「何でもそのわけがあるんやで」と言います。
彼は野宿しながらの遍路中だそうです。身近に起こることは何でもその理由があるという持論があるようです。
とにかく今回も大切なものを忘れずにすみました。何度も経験しているのに、またしてもと反省しました。
しばらく国道を進み、高速道路の高架下をくぐり南へ歩きました。やがて西条市に入りますが、ここは旧東予市になります。
「日切大師」が街並の通りから路地を少しは入ったところにありました。境内には小さなお堂と大きなクスノキが鎮座しています。
(写真① 日切大師の境内)
少し時雨れてきたので先を急ぐことにしました。田園地帯を歩いて行くと別格の興隆寺へ行く道の分岐に至りました。
このころから天候が回復し、晴れ間も見えるようになりました。片道3キロほどの道のりなので、急ぎ参拝することにします。
少し行くと登りになりやがて急な登り坂になります。山門をくぐると階段が続きました。
今回、少し簡単に考えていました。あえぎながら登ると、立派なお堂と伽藍がありました。
午前9時8分に、別格10番興隆寺(仏法山 仏眼院 本尊:千手観音)に到着しました。いつものようにお経あげ、御朱印をいただきました。
休憩していると納経所の人がやって来て、茶菓子をお接待していただきました。この寺は弘法大師の入山もあり、藩主などの崇敬も厚かったようです。
現在は秋の紅葉が有名なようです。また本堂は重要文化財に指定されています。
(写真② 興隆寺本堂)
下山の道筋を先ほどの納経所の女性に、詳しく聞いてから下っていきました
。やがて県道に至る。右折してすぐの所に、別格11番生木地蔵(生木山 正善寺 本尊:生木地蔵菩薩)に到着しました。
お経をあげ、御朱印をいただきました。その昔、生木のお地蔵さまと呼ばれていました。
弘法大師が楠にそのまま延命地蔵の像を刻まれたそうです。
(写真③ 生木地蔵)
ネット情報によると、今日の夕方までは天気が持ち、かえって明日はかなりの雨ということ。
よって予定を変更して明日にお詣りするつもりの横峰寺に行くことにしました。ただ距離は12キロほどあります。
10時40分に生木地蔵を出発、県道を歩き妙雲寺の門前の休憩所で靴を脱いで休息をとりました。
ここで昼食も合わせてとりました。この辺りから人家が減り、県道ですが交通量も少なくなっていきました。
道は谷沿いにカーブを繰り返し、2時間弱歩くと休憩所と水くみ場のある所に着きました。
そこで休憩をしていたサイクリスト(日本一周をしているそうです)と出会い、いろいろ情報交換しました。
また丁度水くみに車でやってきていた女性にはお菓子のお接待を受けました。この場所から山道の遍路道に入っていきました。
かのサイクリストによると約2.3キロの登りのようです。
水に濡れて滑り安い岩道を慎重に登ること50分、横峰寺の山門が見えました。
14時37分に第六十番横峰寺(石鉄山 福智院 本尊:役行者小角)に到着しました。
社務所から階段を上がると本堂と大師堂があり、いつものように読経して御朱印をいただき、その後で尺八を吹奏しました。
(写真④ 横峰寺への山道)
(写真⑤ 横峰寺 大師堂)
(写真⑥ 横峰寺にて尺八吹奏)
このお寺は、西日本最高峰・石鎚山を遙拝できるところがあります。なお弘法大師は若いときに石鎚山で修行したと記しています。
境内は石鎚山系の北側にある山の中腹(標高750m)にあり、本堂から20分ほどの星ヶ森から石鎚山を見ることができます。
前回私は、余裕があったので行くことができました。ここで弘法大師は星供養をしたときに蔵王権現が現れたのを感得し、堂宇を整備して霊場としました。
以来、明治期以前まで神仏習合の別当として栄えました。明治の廃仏毀釈で一旦廃寺となったが、明治42年檀信徒の協力によりようやく復興したそうです。
(前回の参拝時の写真)
(写真⑦ 星が森から石鎚山)
下山は61番の香園寺に向かって尾根道を下ります。
3.5キロほど山道を下ると道は分岐し、そのまま尾根道を行き香園寺へ向かう道と、尾根から谷に下り伊予小松駅の方面に行く道に分かれます。
私は後者をたどり、今日の宿「ビジネス旅館小松」に向かいました。
というのはこの時点で午後4時を過ぎていましたので香園寺へ向かっても5時までに着くことができません。
ということで香園寺には明日に行くことにして、直接宿に向かうことにしました。かくして17時26分無事に宿に着きました。
早速風呂に入り部屋にいると、夕食の用意ができたようです。食堂に行くと一人一人が肉のしゃぶしゃぶを食べるもので、大満足の食事でした。
夕食は同宿の3人でいただき、そこで情報交換をしました。別格の巡拝のことや、とにかく結願することを目指していることなど貴重な話を聞けました。
その中でI氏は、今回の初日に大瀬の「いかだや」で同宿したN氏の事を知っており、同じ静岡の出身であるとのこと。
そして徳島では同宿したことなど。また名前がこの時初めて86歳の方がNさんであることも分かりました。
このように遍路同士は、名前や出身地をあかさないでお話をすることが多いのです。
その後洗濯をして、明日の天気をネットで見ているとかなりの雨量のようで、朝から雨具が必要のようです。
とにかく今日は相当の強行軍だったので、疲れも出ましたので速く床につきました。
歩行距離:40.3キロメートル 所要時間:11時間28分