四国尺八遍路パート2 愛媛編⑧ 土井通有
(第4日目続き) 2023年5月26日(金)
私は石手寺前のコンビニから歩き始め県道をしばらく行くと、道後温泉の中心にある重要文化財「道後温泉本館」が見えてきました。
現在、保存修理工事中で覆いをしています。
(写真① 道後温泉本館)
道後温泉の前から商店街を抜け、右折して県道を緩やかに登っていきました。
道しるべをたどると次第に急な坂道になり、ため池のほとりをまわって里に下りていくと、小学校のある四つ辻に出ました。
ここは交通量が多く、歩道橋が架かっているのですが、横断歩道はないのです。
元気な小学生は歩道橋を渡れますが、老人やハンディのある方には辛いと思われます。
そこを過ぎ大通りに出るとまたもや横断歩道がなく、自転車専用の横断道があるのみです。
その向かいのスーパーでトイレを借りて、靴を脱いで休憩を取りました。
途中で出会った方が親切にも次の大山寺への道筋を丁寧に教えてくれました。ありがたいことです。
大山寺が近づき畑に沿って道を歩いていると、農作業をしていた男性に呼び止められ「何もないけどこれを持って行き。」と言ってオレンジをいただきました。
丁度ペットボトルの水が少なくなっていたので、これまたありがたいことです。そして約1時間で大山寺の山門が見えてきました。
(写真② 大山寺山門)
第五十二番大山寺(龍雲山 護持院 本尊:十一面観世音菩薩)このお寺は真野長者の縁起があります。
商いで大阪に船で向かうとき暴風雨に遭って観音様に無事を祈願し、高浜の岸で救われます。報恩にと一宇を建立しました。
本尊の十一面観音は本堂と共に重要文化財である。
(写真③ 大山寺 真言密教最大規模の本堂)
大山寺を15時48分に出て、県道をしばらく行くと円明寺が見え、到着は16時15分になりました。
第五十三番円明寺(須賀山 正智院 本尊:阿弥陀如来)なんとか午後5時の納経所が閉まる前に間に合いました。
この寺には、四国霊場最古の銅板の納札が保存されています。発見したのはアメリカ人巡礼者だそうです。
それは江戸時代初期、慶安3年(1650年)の銘があります。
(写真④ 円明寺)
さてぎりぎり間に合って御朱印をいただき安心しました。今日の宿は松山駅前のビジネスホテルです。
寺から5分ほどで予讃線の伊予和気駅に向かいました。調べておいた16時39分発の電車にぎりぎりで乗れ、
なんとタイミングがよいものかと感心しました。因みに予讃線とはいえ、昼間は1時間に1本、朝夕は1時間に2本の運行なのです。
到着してから松山駅の案内所でホテルの位置を確かめ、宿には午後5時過ぎにたどり着きました。
今日は素泊まりなので、駅前で食事処を探すべく、シャワーを浴び、着替えをして出かけました。
宿で聞いたコインランドリーの近くにあるラーメン店で久しぶりのラーメンをいただき満足しました。
宿のビジネスホテルは洗濯機ができないので、ここのコインランドリーを利用しました。
少し利用料が高めでしたが、乾燥機の性能が良く10分ほどで乾燥しました。これはこれでよかったと思います。
ビジネスホテルの部屋は手狭でしたけれど、ゆっくり体を休めることができました。
歩行距離:35.3キロメートル 所要時間:11時間22分
○第5日 2023年5月27日(土) くもりのち晴れ(薄曇り)
今日は、JR松山駅から再び列車に乗り、昨日の伊予和気駅に向かいます。
できるだけ早く行きたいので始発列車に乗ることにしました。朝食はホテルの部屋で買っておいたパンを食べて済ませました。
そして始発5時53分発の列車に乗るために早く出発しました。この列車に「乗り鉄」の若者に会いました。
高松まで乗るそうで、始発列車を外すと予讃線直通の高松行きがないのだそうです。いろいろと不便な事情があるものですね。
和気駅には6時過ぎに到着、円明寺に戻りました。ここから予讃線の踏切を渡り、大通りに出て北に向かって歩いて行きました。
しばらく進むと海岸に沿った県道に出てこの道を進みました。日差しはあまりなく歩きやすい天候になりました。
そして9時前に番外の養護院を過ぎたところでスーパーマルナカのベンチで何度目かの休憩を取り、靴を脱いでゆっくりしました。
今日は札所のお寺はなく、今治市大西町の宿までひたすら歩きます。しばらく行くと鎌大師があり、ここから小さな峠を越えます。
旅の安全を祈願して峠に向かいました。この峠の下り道は工事中で車は通行できませんでした。
おかげで車に気を遣わずマイペースで歩けました。
(写真⑤ 穏やかな瀬戸内海)
坂を下っていくと浅海(あさなみ)地区に行き着きました。快調に歩いて行くとおばあさんが出てきて私を呼び止めます。
「お遍路さんもっと近くに来て」と拝むように私の手を取ります。「ご苦労様です」と感謝の言葉を述べられます。
私にはこれは何かの縁と思い、「尺八を吹かしてもらいます」と言って、リュックを下ろし、たたんでいた尺八を組み立て「水鏡」を吹奏しました。
すると、おばあさんは久々に尺八の音色を聞きました。昔、三味線を弾いていたので懐かしいとおっしゃいました。
これもまた何かの縁と思いました。おそらくは私のリュックには熊よけの鈴が付いており、遠くからでも音が聞こえたのでしょう。
まさに一期一会なのです。お接待に特製のお茶をいただき、丁重に礼を言って先を急ぎました。
しばらく行くと松山市北条から今治市詫間町に入り、時間は11時過ぎ番外の遍照院に到着。ここでも休憩を取りました。
詫間町は瓦の生産が盛んで、特に鬼瓦が有名なようです。
(写真⑥ 遍照院の仁王門の仁王さんならぬ、鬼瓦)
また少し歩いて正午過ぎになりました。丁度よくコープがあり昼食の弁当を買ってベンチでゆっくり食事とることにしました。
そしてさらに青木地蔵を越えて海岸線を北東に向かって進みました。やがて今治市大西町に入りしばらく行くと街並みに入っていきました。
そして国道196号線に沿って歩くと、今日の宿「ますや旅館」に到着しました。
その前に到着が速くなるので大西町に入ったところで電話連絡をしておきました。あまり早く着くとチェックインできないときもあるのです。
さて2時過ぎに到着すると、出迎えてくれた女将がいうには、ありがたいことにお風呂がもう沸いているとのこと、早速汗を流さしていただきました。「感謝・感謝」
(写真⑦ ますや旅館)
いつものように洗濯をして、夕食をいただきました。夕食はロ−ストビーフなど和洋のなかなかのごちそうでした。
実はこの宿は予約のときは第2候補で、近くのビジネスが休みだったのでここに決めました。
でも当たりの宿でした。長い遍路にはこのようなこともあります。当然、逆のことも起こります。これも一期一会なのでしょうか。
歩行距離:31.9キロメートル 所要時間:8時間3分