四国尺八遍路パート2 愛媛編④ 土井通有
○第1日 2023年5月23日(火) 晴れ(朝、時雨)
今回のお遍路は、愛媛県の前回の続きを巡拝することにしました。天候の安定する五月下旬に計画しました。
前日の夜行バスにて大阪を発ち、早朝の6時30分には大洲市に到着しました。
町のコンビニで朝食を買いこみ、早速、出発しました。
まず50分ほど歩いてで別格8番十夜ヶ橋(正法山 永徳寺 本尊:弥勒菩薩)に到着しました。
この寺の由緒は、弘法大師が衆生済度大願のため四国を行脚していたおりに、この地で宿もなく一夜を土橋の下にて野宿しました。
夜明けを待ちかね、一夜も十夜の長さに感じられました。そして衆生を思い、速に常楽の彼岸に至らしめんと大悲の御心は、
『生きなやむ 浮き世の人を 渡さずば 一夜も十夜の 橋と思う』 と詠じられて久万菅生山に旅立ちました。
このことにより、このお寺を十夜ヶ橋と名が付いたと伝えられます。
また、遍路が橋を渡るとき、杖をつかない(お大師さんが橋の下で寝ているので)ようにする風習はこの話から起こったものです。
(写真① 十夜ヶ橋のお堂)
(写真② 現在も十夜ヶ橋の下にある野宿場)
さて、今回の打ち始めに旅の安全を祈願して読経し、朱印をいただき、尺八を吹奏しました。
ここからは国道56号線に沿って内子町に向かって歩き始めます。2時間余り歩いて、内子町に到着しました。
ここには重要伝統的建造物群保存地区があり、町並みが保存されております。
その一つにかつての賑わいを思わせる芝居小屋「内子座」(国の重要文化財指定)が現存しています。
この地は大正年間木蝋や生糸で栄え、地元の愛好者によって建てられました。それは回り舞台や花道、枡席を備えた立派なものです。
また現在も使用されている伝統的芝居小屋なのです。
(写真③ 内子座の入り口)
お昼も近づき町のスーパーで弁当を買い求め、早めの昼食をとりました。まず靴を脱いで足を休めました。
道は国道56号から379号へと移り、東の方に向かって大瀬地区を目指します。
この地は2023年3月に亡くなられたノーベル賞作家「大江健三郎」の出身地です。今も出身の小学校があります。
(写真④ 大瀬小学校)
さらに谷に沿っての道を1時間ほど歩き、今日の宿「いかだや」に到着しました。ただ宿はまだ開いていません。
内子町の地域振興課が関係する宿で、担当者は15時にならないと来ないそうなのです。仕方なく軒先のベンチで待つことにしました。
しばらくすると一人のお遍路の男性がやってきました。同宿の方のようです。
話を伺うと、お年は86歳、通し打ちの歩き遍路、時間がかかってもじっくりと歩いているようです。まことにお元気で見習いたいものです。
やがて係の女性が車でやって来て、しばらくして準備が整い、迎え入れていただきました。
いつものように風呂に入り、洗濯をして夕食をいただきました。ここの風呂は2つ有り、それぞれが自分でわかして入浴しました。
それなので風呂の順番を待つことはありませんでした。おかげで家風呂のようにくつろぐことができました。
この宿は元小学校を改修して、この地域にあった遍路宿を再現したものなのです。ただし、設備は現在のもので何かと便利にできています。
(写真⑤ 宿いかだや)
(写真⑥ 遍路道に咲く、卯の花)
同宿のNさんは静岡県の方で、私の友人も静岡に住んでいるので何かと話がはずみ、たのしく情報交換ができました。
余談ながらこの宿の運営も高齢化などで大変なようで、今後どうなるか分からないとのこと。
この地域にある貴重な宿なので、何とか存続を願いたいものです。
歩行距離:29.1キロメートル 所要時間:6時間58分