四国尺八遍路パート2 愛媛編① 土井通有
○第9日 2023年3月16日(木) 晴れのち雨
昨日会ったE氏は、観自在寺のある愛南町の旧御荘町には泊まらず、更に10キロほど先の柏地区にある宿に泊まるということでした。
彼と観自在寺で別れたのは午後3時を過ぎていましたので、無事に日暮れまでにつけたか心配になりました。
(写真① 観自在寺)
(写真② 観自在寺での尺八吹奏)
昨日の「山代屋」は素泊まりの宿だったので、夕食はS氏と二人で近くの居酒屋兼食事処に行きました。
新鮮な魚介とご飯ものをいただき、ビールで乾杯しました。久々にリラックスできました。
さて今日は約25キロ先の宇和島市の旧津島町岩松にある「三好旅館」まで行く予定です。
まず旧内海村柏まで10キロは国道を歩きます。ここからは峠越えの遍路道と国道を行く海辺の道の二つがあります。
私は、遍路道を行くことにしました。ここでは奈良から来た遍路と共に長い上り坂を行きました。
そして柳水大師の休憩所で追いついて来たS氏と合流しました。
さらに尾根道を行くと「つわの奥」というベンチのある所に着きました。
ここは宇和海の見晴らしがよく、二人はつかの間の休息をとりました。
(写真③ つわの奥からの宇和海)
つわの奥からしばらく山を下ると休憩所があり、そこには初老の遍路者が大きなリュックとカートの二つを抱え休憩していました。
話を聞くと東日本大震災で被災して家族を亡くし、遺骨と共に遍路しているとのこと。彼は僧侶のようですが寺に属することもなく、
放浪しているようでした。話の後で「あなた、余裕がないですか・・」「えっ・・(これはお金のむしんか)」私は少し話の筋をそらして、
「荷物が多いようなのでこの山道は大変ですよ。」と告げ、合流したS氏と共に先を急ぎ下山しました。
峠を下り津島町の川沿いを行くと、道端でスマホと向き合うE氏に会いました。
昨日は無事に宿に到着したそうで安心しました。さて何をしているかというと、今日泊まる宇和島市内の宿を探していたのです。
ところがどこも満室でなかなか見つからないようなのです。
私たちは、道路沿いのコインランドリーの休憩所に入り、私は昼食をとり、彼は更に他の宿と連絡を取りましたがなかなか予約ができません。
そこでわたしは「最悪の場合、私の泊まる宿の三好旅館にて相部屋でもよいですよ。」と申し出て、ひとあし先に出発しました。
午後2時頃、宿に着きましたが入り口は空いているが「あれ!」留守のようです。用事でどこかに行っているのでしょうか。
ただ応対がありません。仕方なく岩松の町をぶらぶらしました。ここ岩松は、文豪の獅子文六の小説「てんやわんや」の舞台になったところです。
ここからほど遠くない大畑旅館に彼が逗留し、執筆したとのことです。今日の宿では先日からのShinさんとまたもや同宿でした。
(写真④ 川沿いにある大畑旅館)
歩行距離:26.4キロメートル 所要時間:5時間54分
○第10日 2023年3月17日(金) くもりのち雨
三好旅館で朝食をいただき、7時前には出発しました。今日は午後から雨が降るということで先を急ぐことにしました。
宇和島との境の松尾峠はトンネルで越えることにしました。
宿の女将からはトンネルには左側に広い歩道があるので、必ずそちらを行くようにとアドバイスをいただきました。
松尾トンネルは1700メートルほどあり結構な長さ、交通量も多いので危険なのです。
このトンネルを出て高速道路のインターを過ぎてから宇和島の市街に入っていきます。
市街に入ると馬目木大師が路地の奥にあり、途中で町の人に聞きながら探しあて、お経を上げることができました。
ここから宇和島市内にある別格6番の龍光院(臨海山 福寿寺 本尊:十一面観世音菩薩)に参拝しました。
この寺は宇和島の初代藩主伊達秀宗公が、藩と領民の安泰をはかり、宇和島城の鬼門にあたるこの地に鎮めとして建立しました。
また寺領も賜り伊達家の祈願寺となりました。また小高い丘の上にあるので天守閣が南西に臨めます。
(写真⑤ 宇和島城の天守)
また龍光院は宇和島駅の近くにあり、そして今日の宿(オリエンタルホテル)は駅のすぐ北側にあります。
そのためまず宿に荷物を置き、市内から約10キロ離れた四十一番の札所龍光寺(稲荷山 護国院 本尊:十一面観世音菩薩)に参拝することにしました。
この行程になったのは、龍光寺と仏木寺のある旧三間町には宿泊施設がないのです。三間町に宿泊があると都合が良いのですが・・。
そしてまだ午前中なので十分行ける時間と距離なのです。三間町には以前は三軒ほど民宿がありましたが、コロナなどの諸事情で廃業したようです。
ここまで同行した遍路者の皆さんも苦労しておりました。なかには少しきついが仏木寺から峠を越えて次の町の宿まで行く人もいます。
いつの日か三間町に宿が復活することを願っています。
さて私はホテルに荷物を預けて、サブザックに参拝用具と雨具・カメラなどを詰めて龍光寺に向かいました。
だいたい3時間弱の行程です。途中のコインランドリーの休憩所で買っておいたパンと野菜ジュースで昼食をとりました。
天気は下り坂なので今にも降り出しそうです。三間は宇和島より少し高い盆地状の地にあります。
そこで国道56号の緩やかな坂を登っていきました。龍光寺に着く頃には雨が降り出し、少し強くなってきました。
上下のレインウェアーを着ての参拝となりました。お経を上げ、無事参拝の願いを込めて尺八の吹奏を奉納しました。
龍光寺は国指定の史跡で、真言宗御室派の寺院で、江戸時代までは神仏習合であり、ここにある稲荷社がもとの札所でした。
今でも本堂の奥の高いところに赤い鳥居の稲荷社が見えます。
(写真⑥ 龍光寺本堂と奥の赤い鳥居)
さて今日の宿である宇和島のビジネスホテルに戻ることになりますが、帰りは2キロほど戻ったJR予土線の務田駅から2駅乗って宇和島駅に戻りました。
歩行距離:26.1キロメートル 所要時間:6時間18分