尺八で人の心を癒やす
~風さんの虚無僧修行~
虚無僧・宮谷風(ふう)。尺八仲間では「ふうさん」(風さん)と呼ばれ、お稽古の時でも「風さん」と声をかけます。
数年前に京都・明暗寺で認可をいただき正式な虚無僧になりました。
もともと禅僧ですので尺八をもって禅的な修行をし、僧侶として利他行のために尺八托鉢をしています。
「尺八の音で人々の心を癒やすことができる」という強い信念を持って活動しています。
風さんの虚無僧修行に心を動かされ動画として紹介したいという方がこの度youtubeでインタビュー形式で公開されています。
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https://www.youtube.com/watch?v=_UTPWOOJO1c
(「光明寺前」)
風さんは私の弟子のひとりで出身はアメリカのカリフォルニア州です。
偶然の出会いからぜひ入門したいということでもう5,6年ほどお稽古に来られています。
アメリカでは楽器を手に入れて自己流で吹いていたのですが如何せん、吹奏の基礎が分からないということでした。
音はある程度出てましたのでまず琴古流本曲「三谷菅垣」から始めました。それから「手向」「三谷」、琴古流「鶴の巣ごもり」等。
研究熱心で私の『尺八吹奏法Ⅱ』の中心ともいうべき「口腔前庭」理論も「上唇裏のエヤースポットair spot」と理解し、その獲得に今でも努力しています。
もともとプロ級のブルース・ベーシスト&ボーカリストでして音楽の基礎、素養は十分備わっていますので上達も早いです。
ただベースという弦楽器が専門ですので尺八の基礎となる呼吸法が分かりにくかったようです。
今でもお稽古をつけているとき、「息を吐ききるのです」とか「吐ききったら息は吸わなくても自然に体の中に飛び込んでくる」というふうな指導が欠かせません。
風さんは日本に来てまだ10年弱のようですので専門的な内容の日本語理解が難しいですし、私の方は学校で習った英語に
1年ほどNOVAという英会話教室で教えてもらった程度の英語力ですのでなかなか指導に困難があります。
たとえば「口腔前庭」を言い表すとき私が、「マウス、アッパー、バック、スペース」(mouth, upper, back, space)とか言いました。
「上唇の裏側にできる空気部屋」のつもり。
ところが風さんは困った顔をして「ウワッWhat ?」というので、しかたなく「マウス、アッパー~~」を何回も身振り手振りで私が繰り返すだけ。
もちろんこんな日本語英語では通じる訳ありませんでした。
何回目かのお稽古の時、「behind(上唇の)、air pocket]と風さんがご自身で言って納得されました。
私は「So,so!]とほとんど日本語の「そう、そう」と言い、やっと2人の間で今後「口腔前庭=エヤー・ポケット」という申し合わせができました。
もちろん発音するときは気をつけて「エヤ・パケッt]と英語らしく発音するのですが。(英会話教室のお陰です)
このように、いつもお稽古では会話で苦労しています。もっと私に英語力があるか、もっと風さんに日本語力があればいいのにといつも思っています。
さて風さんは大阪在住ですが尼崎の光明寺を中心に活動されています。
もちろん托鉢修行はいろいろなところに行くのですが遠くでは奈良の室生寺などでも吹きます。
「光明寺和尚さんと連管」)
「尺八の音は人の心を癒やす」をモットーに真剣に尺八活動をしています。
風さんにとって私は尺八の師匠ですが、尺八の本質から言えば風さんが私の師匠とも言えるでしょう。
(「尺八の音は人々の心を癒やします」)