小学校邦楽鑑賞会での演奏
貴志清一
2023年1月19日、依頼により大阪府貝塚市立葛城小学校へお琴の先生といっしょに演奏に行ってきました。
修験道の行場で有名な犬鳴山から和泉山脈を東へたどると和泉葛城山があり、小学校はその裾野にあります。
ちょうど創立150周年を迎えたところで明治の学制頒布の年にできた歴史ある学校です。
対象は5,6年生。音楽の教科書で取り上げられている和楽器、特に琴・尺八は文部科学省の指導要領にもあります。
しかし、実際の演奏を身近に聴くことはほとんどありませんので邦楽普及の一助になるかとの考えで
昨年6月の同市津田小学校に引き続き演奏させて頂きました。
貝塚市立葛城小学校HPより
尺八奏者の中には地域の学校にでかけて演奏されている方もございますし、これからそういうボランティア活動をしようと
ご計画の方もいらっしゃると思いますので例えばということで当日の流れを曲目順に紹介させて頂きます。
1.「竹田の子守歌」
もう50年ほど前になりますが、フォークグループ赤い鳥が京都の子守歌を採譜して現代に蘇らせた名曲です。
素朴な旋律にもかかわらず味わい深い情緒を湛えた素晴らしい曲で次の世代にも伝えていきたいという思いで演奏しました。
なんと言っても尺八・琴の音色にぴったりの曲です。
(音源01)
https://comuso.sakuraweb.com/music/470-R07_0001.MP3
2.「さくら さくら」
日本古謡の「さくら さくら」を琴の楽器紹介で演奏しました。繰り返しの後はやや複雑な動きでお琴らしい雰囲気をだしています。
演奏効果として、やはり和装の着物での演奏がより子どもたちの集中力を高めたようです。
(音源02)
https://comuso.sakuraweb.com/music/470-R07_0002.MP3
3.「江差追分」
子守歌と追分は地無し管を使用しています。節を残した素朴な竹の音色がほしかったからです。
地塗りもそうなのですが、地無し管はより自然の風の音や波の音に近いのです。
打ち寄せる波の情景をより分かりやすくするために効果音として民族楽器を使いました。
タンバリンのような形の○枠のなかに細かい粒をいれて裏表に張った皮で共鳴させる楽器です。
その音にのってのんびりした自由リズムの追分メロディーが歌っていきます。波の打ち寄せる音と尺八の音色を楽しんでもらえたようでした。
「民謡なんて古くさい!リズム感のある鬼滅の刃の『紅蓮華』でも吹こう」という行き方もあるのですが、
子どもたちの感性はこんな追分のメロディーにも十分応えられるのだということが分かりました。
第一、基本的にタンギングのない尺八なので速いリズミカルな曲はどう吹いてもゴミみたいな演奏になってしまうことを肝に銘じましょう。
(音源03)
https://comuso.sakuraweb.com/music/470-R07_0003.MP3
4.「キビタキの森」
尺八は自然の音に近いということで、鳥の鳴き声も真似できるという話をしました。その例として「キビタキの森」を演奏しました。
途中にタンギングの箇所も出てくるので必要悪でしょうか、やや歯切れのよい一尺六寸管を使用して吹きました。
尺八はこんなこともできるのだということを子どもたちに分かってもらえたのではないかと思います。
(音源04)
https://comuso.sakuraweb.com/music/470-R07_0004.MP3
5.「春の海」
今や国民的お正月音楽になってしまった曲です。今年のお正月も商店街・スーパー・○○モールでしつこいほど鳴っていました。
私も今まで何十回となく演奏会で吹いた曲です。
少々手垢のついた感を免れませんが教科書の音楽鑑賞会の指定曲ですので外すわけにはいきません。
今回は趣向を変えて、後半部分を尺-ダーで演奏しました。
尺-ダーとは子どもたちが使っているソプラノリコーダーの吹き口部分を切り取ってエッジに直接息が当たるようにしたものです。
音はほとんど尺八音。少々退屈していた子どもも「何や、あれ」と見てくれていました。
(音源05)
https://comuso.sakuraweb.com/music/470-R07_0005.MP3
6.尺八とリコーダーに優劣は無く、ただ違いがあるだけ
せっかく尺-ダーを出してきましたので日本の楽器と西洋の楽器の違いを実際の音でお話ししました。
尺八の音で「もののけ姫」はよく合うのですがリコーダーではもう一つ。また運動会のかけっこでかかる速い曲では尺八は全く無力になることを説明し、
日本の楽器にはそれに合った曲が有り、西洋の楽器もまた然り、ということを理解してもらえたようです。
(音源06)
https://comuso.sakuraweb.com/music/470-R07_0006.MP3
7.「翼をください」
さいごに西洋の和音を使ったりしているのですが、歌はまさしく日本語というフォークソングの名曲、教科書にも載っている「翼をください」を演奏しました。
この曲はお琴と尺八で演奏しても違和感はないという実例です。
子どもたちも知っているので一緒に歌い出したりして最後を飾るには最適の曲でした。
同じ内容を2コマするのは少々体力がいったのですが、日本の楽器琴尺八、ひいては日本文化を少しでも子どもたちに感じ取ってもらえたら演奏者冥利につきます。
(音源07)
https://comuso.sakuraweb.com/music/470-R07_0007.MP3