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「篝火」・・・箏曲クラブの講師として10年              貴志清一

 もうかれこれ10年近くになるでしょうか。
古い話ですが東洋の魔女・ニチボー貝塚の貝塚市にある500人のホールを備えた立派な公民館の箏曲クラブで
指導者としてやってきました。

もちろん私は尺八奏者ですのでお琴の細かい技法までは無理ですが、音楽としての合奏技術を指導して参りました。

もちろん箏曲クラブとしても発表会やイベントで演奏するとき、私が吹けばいちいち尺八奏者に演奏を依頼する手間が
省けるということもあると思います。

 それはそれとして、琴は柱がありますので基本的に調弦を決めればある一定の音階に定まり、
別の調に転調したければ押し指という難しい技法に頼らなければなりません。勢い転調の少ない曲になります。
平調子ならレ-ミ♭-ソ-ラ-シ♭-(レ)D- E♭-G- A- B♭-(D)

 1945年の敗戦後、尺八・琴の音楽は西洋音楽の影響をまともに受けます。
日本音楽とはまったく方向の違う西洋のハーモニー(和声)を使って作曲された曲が増えてきました。
安易な邦楽の西洋音楽化に対抗して作曲活動をした長沢勝俊のような人もいたのですが、
流れは西洋のリズムと和声を使った曲作りがなされてきました。

 その典型として1970年大阪万博のために作曲された「篝火」という曲があります。
コロナ禍騒ぎも落ち着いてきましたので邦楽クラブも発表会をすることになり、合奏曲としてこの曲をメインにしました。

 「篝火」はト短調の調性によっています。すると一番大切なコード(和声)はGmです。
そのコードを決めるB♭が実は調弦された糸ではなく、八の押し指ですので、きわめて不安定。
ここに和楽器で西洋風な曲を演奏する限界を感じます。

 しかし、当日のクラブ員のみなさんは頑張って演奏していました。
演奏技量はそれぞれですが、みんな寄って音を出す楽しみでやっていますのでなかなか有意義な発表会でした。

 尺八パートは篝火の揺れる炎を表現しているような感じでした。
(発表会の写真)


 それにしましても、この「篝火」は当初フルートで吹くことを想定していました。
ですので演奏の滑らかさを考え七孔尺八で演奏しました。七孔尺八は音色が単調になりがちです。
もちろん地塗り尺八自体が単調な音色なのでしかたありませんが。

しかし、地無し尺八の音色の多様な深い表現に適した竹を吹いていますと、どうしても地塗り尺八は吹く楽しみに欠けます。
ですので、地無しと地塗りのバランスをとって吹いているといった毎日です。