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2021.11.6国際尺八コンクール課題曲の課題? ー
この秋は尺八発祥の地、そして熊野古道の和歌山・田辺へ集まりましょうー  

昨日わたくしの所に稽古にきている方より2021.11.6国際尺八コンクールとそれに付随するいろいろなイベントがあることを知りました。
https://www.shakuhachicon.com/

和歌山の田辺市を中心としたイベントで、近くに尺八と醤油・味噌の発祥の興国寺があります。
しかも私自身、和歌山出身で今は大阪にいますが「わかやま」と聞くだけで20代中頃まで過ごした懐かしい故郷がよみがえります。  
興味がありましたので要項をみると、課題曲が「荒城の月」とあります。
http://www.hogaku.com/210501/210501-g.pdf

もう今年で68歳の正真正銘、前期高齢者です。わざわざ若い人たちに混じってコンクールという年はとっくに過ぎてしまいました。
ただ参考までに「荒城の月」については好きな曲ですので一度吹いてみました。
(課題曲楽譜通り」音源)
https://comuso.sakuraweb.com/music/441-1.MP3

1段目の3小節目、4拍目が滝廉太郎が書いた通りのチメリでさすがに良く研究されているなと感心しました。  
滝廉太郎はドイツ・ライプティッヒ留学の少し前、1900年にこの曲を作曲し「中学唱歌」に載って以後国民的愛唱歌になりました。
 『中学唱歌』の荒城の月が載っているページが次の画像です。  
(中学唱歌の画像写真)
 
原調はロ短調ですので上記の箇所はE♯になっています。これは能の謡(うたい)や尺八のナヤシを模したものでしょう。
さすがに大分県竹田にいた少年時代に尺八の名手として有名だった滝廉太郎らしい工夫です。  
次に課題曲譜の3段目、7段目ですが、あってはならないことですが、楽譜が間違っています。正確に言えばリズムが間違っているのです。
(荒城の月楽譜清書の画像)

 ここは4部音符でタン・タン・タン・タンと気持ちを高めて次の付点四分+八分音符に持って行く大切な所です。

それを課題曲楽譜のように付点四分から始めると、まったく「演歌」のようになります。作曲者、滝廉太郎への冒涜とも言えます。

また奏者の腕を試すために4段目の4小節目を転調の経過小節としているのですが、これは「おかしい」。どう吹いても違和感があります。

「荒城の月」は西洋の五線譜を使っていますが、内容は日本の陰旋法そのものです。

しかも主音から上行のときは5番目の音を主音の1音下にとり、下行のときは主音の長3度したにとるという原則を守っているのです。

それでいて西洋のピアノで和音付けをしても違和感のない曲に仕上がっているのです。

いままでこのような作曲技法を編み出した人物は滝廉太郎が初めてでしょう。

その意味ですごい才能の持ち主だとわかりますし、その夭折が惜しまれる所以です。

ですから、この転調処理にしても課題曲のフレーズはあまりに違和感がありすぎです。

とりあえず自分なりに転調をするためのフレーズを考えたのが次の修正楽譜です。  

この中に先ほどの陰旋法の音の並びもいれてますので、参考にしてください。

また修正の箇所の音源、「修正課題曲荒城の月」もお聴きください。
(「課題曲の修正入り楽譜」)
 
(修正の音源と修正の荒城の月の音源)
https://comuso.sakuraweb.com/music/441-2.MP3

https://comuso.sakuraweb.com/music/441-3.MP3

いろいろ書きましたが、決してこのイベント自体を非難しているのではありません。

私の住む大阪泉州から3時間ほどの所ですので、11月にはぜひこのイベントに行ってみたいなと考えています。  
最後に2021国際尺八コンクールの成功を心よりお祈り申し上げます。
 (なお、このHPの音源はコピー禁止とさせて頂きます)