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 猛暑日のボランティア演奏=ピッチとの戦い
                 貴志清一
 2018年7月19日。今日は京都では史上最高気温を更新して39.8℃になりました。大阪の豊中市では38.7と体温を上回る発熱状態。
そしてここ大阪の南部で海に近い泉南市では35℃になりました。
 1:30pm.開始のボランティア演奏を頼まれていまして高齢者施設に尺八を吹きに行ってきました。
 曲目は「荒城の月」、「星影のワルツ」、「上を向いて歩こう」「君といつまでも」「故郷」の5曲。
 伴奏なしの尺八1本では少し寂しいのでいつも自分で伴奏を作ります。
市販のカラオケCDを使うという手もあるのですが、たいてい尺八で吹きたい指遣いの調でないので使いにくいこの上ないです。
 また尺八はフルートのようにジョイントで音程(ピッチ)を変えられませんので大抵のCDとは合わないことが多いのです。
 前号で取り上げました443~444Hz平均の琴の伴奏CDを使ったかたもあるかもしれません。
その方は、おそらく「CDのピッチが高すぎて合わすのに苦労した」とおもいます。

通常の一尺六寸管ですとお正月頃など思いっきりカリ吹きをしなければならないからです。
 それでは!と冬の338Hzでも高く感じる時季に444Hzの伴奏に合わせるよう短く製管したしますと、
夏場450Hzという、とんでもないピッチの尺八になってしまいます。
 
 CDに合わす必要のある尺八奏者にとってはいつもピッチ(音程)との戦いが待っています。
 わたくしに関して言えば、ピッチの問題解決法は、
1.お琴との合奏の場合、常にこちらの一番いい音でなるピッチで調弦してもらう。
2.歌の伴奏CDを使う場合、その伴奏CDを家にあるヤマハ・クラビノーバという電子鍵盤楽器を使って作成する。
というやり方です。
 
 いつもは440Hz、少し気温の低いときなら338Hzぐらいで伴奏CDを作成するのですが、今日は外気が35℃もありましたのでとりあえず444Hzの伴奏にしました。
 
 
 このクラビノーヴァについて少し説明します。

 楽器に向かった時の感じがpicture1です。
 タイトルに「ピッチとの戦い」と書きましたがこの器械を使いますと0.2Hz刻みで音程を変えられますので実は戦う必要がないのです。(picture2)
 今日のように室内でも30℃を越える会場の場合、伴奏を442Hzにしますとかなりメラなければなりません。
 しかしピッチが可変ですのでとりあえず444Hzにして伴奏を作りました。
 私の音程感の良し悪しを別にしてもらえば、今日は444Hzで気分良く不自然なメリカリをしなくても演奏できました。
 またpicture2の右の方にtranspose というボタンがあり、入力した伴奏をどんな調へも変えることができます。
 その伴奏なのですが自動伴奏機能があってジャズ、ラテン、8ビート、16ビート、ダンス音楽等いろいろあって演歌の伴奏形まであります。
 もちろんテンポは自由に変えることができます。

 伴奏にはリズムが付きものですが、ある一つの伴奏に4つのパターンがありワンタッチでドラムのフィルイン(fill-inおかず)も入ります。(picture3)
 まがい物とはいえ楽器の種類は500色ほどもあり、本物に近い音色で演奏できます。
 シンセサイザーでどんな楽器の音色も再現できるという機械信仰が昔ありましたが、結局それはあまりに人工的だということが分かり、
 このクラビノーバでは本物の楽器の演奏音を使いそれをサンプル音源として加工しています。
 一生懸命機械的に音を合成した挙げ句、"やはり本物の楽器の音色にはかなわない"ということです。
 
 さて、このようにして作成した素人の伴奏ですが参考例として444Hzの「君といつまでも(伴奏)」をお聴き下さい。暑い部屋ですと、これに合わせて「チ  りメリ り ツ~~~」と気持ちよく吹けるかもしれません。
 (伴奏「君といつまでも」→389-R09_0006.mp3
 実際に本日吹いた尺八演奏も聴いてみて下さい。猛暑の中の444Hz「君といつまでも」です。話し声なども入っていますが、その場の雰囲気を感じていただければ幸いです。
(尺八演奏「君といつまでも」→389-005_180719_1235V0.MP3)