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 第1回月翁文献を読む会報告
 「対管、子規(ほととぎす)・初音」
 ~月翁文献を読む会は途中参加歓迎~
 
 2018.4.24(火)1時すぎより第1回目の月翁文献を読む会がありました。
参加は平日ということで2名でしたが、本文や資料の読み込み、それに活発な討議を重ねることができました。
 『江戸時代における尺八愛好者の記録』の「はじめに」では尺八史の基礎文献として史考・史観・宗史と略称される、
➀『尺八史考』
②『琴古流尺八史観』
③『普化宗史』
があることを確認しました。 
 このうち史観と宗史は参加者の蔵書にあるのですが、史考は古い本で入手困難ということです。
 しかし現在、国会図書館のデジタルライブラリーで全文閲覧可能ということをお互いの情報で確認できました。
 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/957640 
 
 p6「この文献の旧蔵者であり当事者である月翁とは、肥後熊本細川家の支藩である宇土細川家(三万石)六代目藩主細川興文(オキノリ)その人である。」と『江戸時代における尺八愛好者の記録』にあります。
 細かいことですが、興文は六代目ではなく、五代目です。
 
 p8月翁文献は目録として20項目挙げられています。
 文書ばかりでなく、例えば(一)のように、尺八 三管(月翁作、琴古作、古鏡作)と実際の古管も含まれています。(写真入りでよく古管の雰囲気が伝わります)
 その尺八ですが、1管は参勤交代で江戸在府中に得た黒沢琴古作のものです。その尺八と音程がほぼ合うように自作した月翁の尺八が同じ箱に入れられて対管としています。
 詳しい計測図もp13以降に掲載されていまして、製管を趣味にしているK氏からは十割りではないかという意見が出されました。
 一方古鏡のほうは本文付図では九半割としています。
 
 さて、月翁が大切にした対管2本には箱書きがあります。
(箱書き写真図)
  
本書の翻刻では以下のようになっています。p11
 「安永癸巳之春月翁揀採肥後益城郡休村之竹尺八一管於桂原山中蕉夢庵作見恵干予妙調蔵家夏五月君龍誌 尺八一管琴虎作月翁子親自ら書して銘とす 歌に 待つことは初音ばかりと思ひしに聞きふるされぬほととぎすかな 西行」
 
 この『江戸時代における尺八愛好者の記録』の方針として、p3「本書は記録集でありますので、・・・学術論文を目指したものでなく、・・・事実を現代の尺八愛好家に知っていただくことを目的と」しています。
 ですから、原文の読み下しも必ずついているわけではありません。
 私たち尺八愛好家がこの本を元に考察していかなければならないわけです。
 そのことを踏まえ、この資料を写真版と見比べ意見を交わすなかで判明したことがあります。
 翻刻文中の➀「夏」は「笈」の誤り。
          ②「親」は「規」の誤り。「子」の後で「子規」ホトトギス読む会でいっしょに読んだ読み下しは以下の通りです。
 「安永癸巳(みずのとみ)の春、月翁、肥後益城郡休村(やすみむら)の竹を揀採(かんさい)し、尺八一管、桂原山中蕉夢庵に於いて作り見る。予に妙調を恵む。家笈(かきゅう)に蔵す。五月、君龍誌す。
 尺八一管 琴虎(きんこ)作。月翁、子規(ほととぎすと)自ら書して銘とす。
 歌に、待つことは 初音ばかりと 思ひしに聞きふるされぬ ほととぎすかな 西行」
 
 対管2本の内、在府中に購入した琴古作の1本に「子規(ほととぎす)」と月翁自ら銘をつけ、自作の同じような長さの竹に「初音」と銘をつけた訳です。
 その名前の由来は西行の山家集189に「待つことは・・・」に依っています。ホトトギスと初音は良く合う言葉です。
 蛇足ながら、歌の意味は、「心待ちにしていたのはホトトギスの初音だけだと思っていたのに、初夏の空で鳴いている声はいつ聞いても新鮮だなあ」ということでしょうか。
 
 さて、順番に1ページごとに声を出して読んでいき、この日は18ページまで進んだのですが、2時間があっと過ぎて琴古管、古鏡管の計測図の討議は次回にすることになりました。
 
 以上が月翁文献を読む会の1回目の概要です。
 この会は途中参加、歓迎ですので、ご興味のある方はご参加下さい。
 
○名称 細川月翁文献を読む会(月1回、全8回)
○日時 第2回2018年5月25日(金)午後1:15~3:15
○場所 大阪府泉南市岡田3-16-16
    尺八吹奏研究会・稽古場
    南海本線岡田浦駅下車、徒歩3分
○会費 1,000円
○内容 『江戸時代における尺八愛好者の記録』を8回に亘って読み進めていきます。
○お申し込み
   ハガキにて「細川月翁文献を読む会」参加希望の旨と連絡法を記載の上、〒590-0531泉南市岡田2-190-7
  尺八吹奏研究会 貴志清一宛、ご投函下さい。
 
『江戸時代における尺八愛好者の記録』(定価3,000円)
※入手は虚無僧研究会本部へ
〒162-0053 東京都新宿区原町3-82 法身寺内
(TEL)03-3202-4876 (FAX)03-3202-3272 (HP)